先日、昔から一度どうしても行ってみたかったフォッサマグナミュージアムをついに訪ねることができた。神奈川湘南の自宅から車で圏央道〜中央道〜長野自動車道〜R148を経て糸魚川まで、まさにフォッサマグナの際を車で走った。フォッサマグナミュージアムの近くのホテルに泊まり、翌日は白馬村まで戻ってR406で、戸隠地質化石博物館を経て浅間山北麓の山小屋へ。
子供の頃から、どこかへ行くとそこの地形がどうやって形成されてきたかにとても興味があった。小学校か中学校の時にプレートテクトニクスの本を読んだけど、地球規模すぎて日本列島の成り立ちはよくわからなかった。最近ではブラタモリで黒部渓谷や糸魚川のフォッサマグナの境界が取り上げられ、ますます自分の目で見に行きたくなった。
これまでにこの手の日本列島の形成に関わる本を何冊か読んだ。一部を紹介します(下記は読んだ順ではなくて発行年の順)。
南の海から来た丹沢(神奈川県立博物館編 有隣新書1991)
八ヶ岳火山(八ヶ岳団体研究グループ編 鬼灯書籍2000)
伊豆•小笠原弧の衝突(藤岡換太郎•有馬 眞•平田大二編著 有隣新書2004)
日本海〜その深層で起こっていること(蒲生俊敬著 講談社ブルーバックス2016)
日本列島100万年史(山﨑晴雄•久保純子共著 講談社ブルーバックス2017)
フォッサマグナ(藤岡換太郎著 講談社ブルーバックス2018)
ざっくりいうと・・・
約2000万年前にユーラシアプレートと太平洋プレートのぶつかり合いからユーラシアプレートの端が裂けて日本海が現れ、さらに6000m程の深い溝(フォッサマグナ)ができて、なぜだかそこにフィリピン海プレートが突如現れて突っ込んできて、さらに北米プレートも参戦する、といういろんな作用から、火山、隆起、沈降、侵食、堆積が繰り返されて…丹沢山地や伊豆半島の形成、箱根火山と富士山、八ヶ岳火山と北アルプス、今も続く南アルプスの造山活動、草津白根山と浅間山と焼山の火山活動…全てフォッサマグナに深く関わっている。
フォッサマグナはそんな所だ。実に興味深い。
湘南から糸魚川まで車で300km余り。家の周辺はすっかり桜満開、甲府盆地ではちょうど桃の花が満開で春真っ盛りだが、長野自動車道に入ると左手に雪を纏った北アルプスが聳え立ち、様相が変わってくる。目的地は博物館なのでちょっと観光っぽくないけど、行くまでの車窓からの眺めで十分に観光気分になった。
白馬村周辺にて
フォッサマグナパーク
Webサイトなどの情報でフォッサマグナミュージアムを見た後にフォッサマグナパークに行くのがお勧めとあったけど、行く途中にあるので先にパークへ立ち寄った。R148沿いの駐車場に停めて10分くらい歩くらしいが、冬季閉鎖の看板で近づくのは諦めて川沿いから遠目にフォッサマグナの境界を確認(でも写真のように誰かいるので近くまで行けたみたい)。
左) フォッサマグナパーク周辺の様子 中) 川縁の崖の枕状溶岩の露頭 右) フォッサマグナの境界
フォッサマグナミュージアム
R148からそれて山を登ったところにある念願のミュージアムへ到着(長者ヶ原考古館との共通入場券¥800)。近くにヒスイ峡やヒスイ海岸があるだけあってヒスイや他の岩石の展示に力を入れた内容だった。フォッサマグナの解説映像はわかりやすくて良かったが、せっかく糸魚川静岡構造線のすぐ近くにあるはずなのに実感できるものがないのはちょっと残念でした。というか構造線の真上にミュージアムを作れば良かったのに、と思ってしまった。
今回ミュージアムの売店で以下の2冊をゲット!富山のジオロジーは読み応えあって特に面白そうだ。
フォッサマグナってなんだろう(フォッサマグナミュージアム編•出版2006)
富山のジオロジー 増補改訂版(相馬恒雄著 シー•エー•ピー2021)
長者ヶ原考古館
ここにくるまで知らなかったが、フォッサマグナミュージアムの入館料にプラス¥100で隣接する長者ヶ原考古館にも入館できる。すぐそばの長者ヶ原遺跡という縄文時代のヒスイの加工場でもあった大規模な集落跡の発掘資料などを見ることできる。ヒスイは富や権力の象徴としてその時代、日本全国に運ばれて珍重されていたそうだ。こんなすごい遺跡があるなんて全く知らなかったので、とても興味深く拝観した。
糸魚川温泉
実は泊まった宿のホテル国富アネックスはまさに構造線の直上。窓からの風景は天気が余り良くなかったけれどもそれでも圧巻。姫川(≒糸静構造線)の向こう(西側)に北アルプス、東側に焼山火山。ここの温泉風呂、糸魚川温泉は、フォッサマグナの分厚い堆積層の地下1,000mから自噴する源泉97℃のナトリウム•カルシウム•塩化物泉•弱アルカリ性•高張性•高温泉。泉質表記からはわからないわずかな石油臭と、いかにも有機成分が混ざっていそうな若干の黒っぽい湯色。ホテルHPによると1500万年前の化石海水とのこと。好みは分かれるかもしれないが、湯上がりサッパリ、肌にもかなり良さそうで、とても気に入りました。ちなみに源泉温度がかなり高いので浴槽の湯温調整に苦労しているようでした。めちゃ熱かったり、冷たかったりすることもあるようですが、フロントに言えば迅速に対応してもらえる。ヒスイ峡やヒスイ海岸にも行ってみたいのでまたここに泊まりたいものだ。日帰り入浴もあるが男性¥2,000、女性¥1,200とかなりexpensive。
姫川のほとりにある宿の部屋からの眺め〜左) 焼山方面 右) 明星山方面
今回の旅行、二日目はヒスイ海岸を散策したりヒスイ峡や高浪の池に行こうかと計画していたが、来る直前、3/27付日経新聞の朝刊の文化面に、戸隠地質化石博物館研究員の田辺智隆氏の記事を読んで、すっかり行きたくなってしまった。予定を変更して戸隠方面へ(朝から雨続きで結果的に散策には不向きだったので正解だったろう)。
R148を南下、昨日来た道を白馬駅まで戻って、R406で長野•戸隠方面へ。焼山や妙高山を拝められるかと期待していたが、雨模様で低く雲が垂れ込めて叶わなかった。このR406、とても国道とは思えないほど細くて、ところどころ荒れた山道。昔、四国の四万十川沿いをドライブして途中山中のR439を走って久万高原に抜けたことがあるが、あれもすごい山道だったが、それを思い出した。R406を登って峠を越えるあたりは道端に食べ頃のふきのとうがたくさん出てたので、すれ違いの安全な少し道幅のあるところに車を停めて、ふきのとうを採取、後日蕗味噌にして美味しくただいた。峠を降りてきてもうすぐ戸隠だというところで少しひらけた集落に来た。「鬼無里」という土地らしいが読み方もわからず、??のまま通り過ぎようとしたところで道端の土手法面の「きなさ」の文字が目に入った。さらに「鬼無里ふるさと資料館」の前を通りかかり、なぜだか猛烈に立ち寄りたくなった。一旦通り過ぎたものの、Uターンした。
鬼無里ふるさと資料館
入館すると(他に観覧者なし、入館料¥200)職員が嬉しそうに?出てきて簡単に施設概要を説明してくれて、そして最初に祭屋台を紹介してくれた。一本の木から削り出した龍などの素晴らしい彫刻が施された祭屋台。宮彫り師の北村喜代松によるものとのこと。その子、北村四海は明治時代の近代彫刻の先駆者。孫養子の北村正信。彼らの大理石やブロンズの彫刻像も素晴らしく、ここが山深い山里にいることを忘れそうだ。鬼無里は平安時代から栄え、京の都から平家を追い出しだ木曾義仲にまつわる話や、戦国時代には武田と上杉で領地争いしたこと。特に江戸時代以降は麻の栽培で栄えたことなどの紹介展示があった。飛鳥〜平安時代に遡る鬼にまつわる伝説「鬼女紅葉伝説」「一夜山の鬼伝説」「木曾義仲伝説」の紹介も土地柄を反映していて面白い。館内所々に貼ってある鬼無里を紹介する観光ポスターが素晴らしく綺麗で、「あのポスターを見ているとまた来たくなります」と受付で話すと、奥からポスターを作成した長野市観光振興課(?)の若い女性が出てきてお礼を言われてしまった。また来ます!
資料館の向かいにある「旅の駅 鬼無里」の蕎麦処 鬼無里で昼食。鬼無里•戸隠産の蕎麦粉を使った十割蕎麦をいただきました。おいしかった!(鬼無里の写真は上の祭屋台だけ。もっと撮ってくれば良かった〜)
近くの鬼無里奥裾花渓谷ではフォッサマグナの堆積層の露頭や、奥裾花自然園では水芭蕉やブナの原生林なども観察できるという。鬼無里は自然も文化も楽しめる興味深いところだ。
鬼無里を出て、山の中を縫うように走るR406をさらに長野方面へ、途中国道からそれて急斜面(とは言っても集落)をクネクネと登ったところにある戸隠地質化石博物館へ。ここから浅間山北麓の山小屋までR406に沿って車で2時間。逆算して博物館は1.5〜2時間見学できる。
戸隠地質化石博物
ここは1981年に旧 柵(しがらみ)中学校の木造校舎を利用して開設された(入館料¥200)。受付に出てきた柔和なおじさんが挨拶してくれた。もしや?と新聞に載ってた方ですか?と尋ねると、「日経新聞を見て来てくれたんじゃしょうがないなあ」と言いながら、簡単に施設の概要や戸隠の土地の魅力を展示を指しながら紹介してくれた。ありがとうございました。元中学校らしく、いかにも理科室にありそうな人形やホルマリン漬けの生物標本、昆虫標本、そしてなぜだかウーパールーパーの飼育槽が沢山雑然?と並んでいた。地質化石博物館と称するだけあって、フォッサマグナの堆積層の地層標本や、約1500万年前から数百万年前までの様々な動植物化石の展示も充実。2F, 3Fの廊下には1900mのボーリング調査で得られた標本が200m分ほど展示されていて、その結果や周辺の地質調査から見えてきた戸隠一帯の極めて複雑な土地の成り立ちが解説されていた。フォッサマグナの厚い生物由来の堆積層があることで石油が取れることもよく理解できる。全体像は複雑すぎてすぐにはとても理解が追いつかないが、とても面白い。四阿山や飯綱山の成り立ちも勉強したくなった。
雨男ゆえ、景色を楽しむことが余りできなかったが、その分フォッサマグナを巡る様々な魅力を感じることができた旅だった。山小屋からほぼ一本道、R406沿線はなかなか魅力的だ(善光寺も次回は是非寄りたい!)。

長文失礼しました。